オスラー病の診断基準

目次

HHT(オスラー病)キュラソー基準・診断チェック

教育・啓発目的のセルフチェックです。結果は医療診断ではありません。

キュラソー基準(4項目)
可能性は低い(0–1項目)
スコア: 0/4

該当項目が少ないため、HHTの可能性は低いと考えられます。

参考:キュラソー基準(Curaçao criteria)— 3項目以上で「確実(Definite)」、2項目で「疑い(Possible)」、0–1項目で「可能性低い(Unlikely)」。年少者では徴候が揃わないことがあります。必ず医師の診断を受けてください。

国際的な「診断基準

1,繰り返す鼻血

2,皮膚や粘膜の毛細血管拡張(唇・口腔・指・鼻が特徴的で、他にも眼球結膜や耳など)

3, 肺・脳・肝臓・脊髄・消化管の「動静脈瘻(動静脈奇形)」

4、一親等以内に患者がいる(可能性が有る)

以上の4項目の内、3つ以上有ると確診2つ以上で疑診1つだけでは可能性が低いとされます。

注意事項
子供の場合、症状を呈するのに時間がかかる場合もあり、2つの項目でも注意して観察します。

逆にHHTの御家族で鼻血があるだけで、HHTと診断するのは間違いです。
鼻血の量や回数の定義はありません。
子供では、普通でもよく鼻血が出ることも考慮する必要があります。

この病気が難治性であることは事実ですが、早期に適切な診断を受けることにより、重篤な症状を回避できる可能性がある病気です。
診断基準に該当する可能性のある方は、早期に専門医を受診してください。

なお、HHTと診断された方は、ご家族にもお話しをされ、ご両親やご兄弟もスクリーニング検査を早期に受けられることを推奨します。

これにより重篤な症状が発症する前にコントロールできる可能性があります。


「確診」となった場合の受診について

スクリーニング検査せず放置や経過観察すると、脳梗塞・脳膿瘍・脳出血・敗血症・肝性肺高血圧症になる危険性あります。

診断プロセス

🧪 1. 鼻出血(Epistaxis)の評価

  • 方法: 問診・鼻内視鏡(耳鼻科)
  • 評価内容
    • 出血頻度:週○回、月○回、年間回数
    • 出血量:ティッシュの枚数、止血に要する時間(例:10分以上)
    • Epistaxis Severity Score (ESS) を用いる場合あり
      • 出血頻度、持続時間、出血量、鉄剤・輸血の必要性などをスコア化(0〜10点)
      • 4点以上で「中等度以上」

👄 2. 毛細血管拡張(Telangiectasia)の評価

  • 方法: 視診(皮膚・口腔・鼻腔)、内視鏡(消化管)
  • 好発部位: 唇、舌、指先、鼻粘膜、口腔内
  • 評価:
    • 直径 1〜3 mm の鮮紅色病変
    • 加齢で増加傾向を示す

🫁 3. 内臓病変(AVM: 動静脈奇形)の検査

(1) 肺動静脈奇形 (PAVM)

  • 検査: 胸部造影CT(gold standard)、コントラスト心エコー(バブルテスト)
  • 診断基準:
    • feeding artery(流入動脈)の径が 2〜3 mm以上 → 治療対象
    • 酸素飽和度低下や脳塞栓リスクがあるため塞栓術検討

(2) 脳動静脈奇形 (CAVM)

  • 検査: 頭部MRI/MRA、必要に応じて脳血管造影
  • 診断基準:
    • 無症候性でも発見率は患者の10〜20%程度
    • 出血既往あれば外科的治療対象

(3) 肝動静脈奇形 (HAVM)

  • 検査: 腹部超音波・造影CT・MRI
  • 診断基準:
    • 肝動脈拡張、血流短絡(A-V, A-P, V-V)を確認
    • 高心拍出性心不全リスク → 心エコーで心拍出量増加を確認

(4) 消化管病変

  • 検査: 上部消化管内視鏡、大腸内視鏡、カプセル内視鏡
  • 診断基準:
    • 粘膜表面に毛細血管拡張病変を複数確認
    • 貧血の原因として重要

🧬 4. 遺伝学的検査

  • 対象遺伝子:
    • ENG(endoglin) → HHT1
    • ACVRL1(ALK1) → HHT2
    • SMAD4 → JP-HHT(消化管ポリポーシス合併)
  • 方法: 末梢血DNAシークエンス
  • 診断基準: 既知の病的変異が同定されれば遺伝学的確定診断

💉 5. 血液検査

  • 目的: 出血・貧血の評価
  • 評価数値
    • ヘモグロビン(Hb):
      • 男性 < 13 g/dL、女性 < 12 g/dL → 貧血
      • HHT患者ではしばしば Hb 6〜8 g/dL と重度になる
    • フェリチン:< 30 ng/mL で鉄欠乏
    • MCV(平均赤血球容積):小球性貧血(鉄欠乏性)

⚖️ 6. 診断後のリスク評価

  • 推奨される検査頻度
    • 肺AVM:初診時CT、その後結果に応じて1~ 5年ごとに再評価(医師の判断)
    • 脳AVM:初回MRIで確認、異常なければ再検は不要(症状出現時のみ再検査)
    • 肝AVM:症状があればエコー/CT、無症状ならスクリーニング不要
  • 家族スクリーニング
    • 一親等に確定患者がいる場合 → 成人は画像検査、児童はバブルエコーやMRI

✅まとめると、「確実」診断がついた場合には、内臓AVMのスクリーニング(肺CT・脳MRI・肝エコー)、鼻出血の重症度評価(ESSスコア)、血液検査(Hb・フェリチン)、遺伝子検査が重要です。
これらにより「生命予後に関わる合併症を未然に防ぐ」ことが診断プロセスの核心になります。

診断基準の詳細解説

臨床医も使用する キュラソー:「Curacao」の診断基準とも呼ばれ、HHTのカンファレンスがベネズエラの北部のカリブ海のCuracao島で行なわれ、そこで決められたため、そのようにも呼ばれます。
上記の遺伝子診断が可能な時代になってきましたが、遺伝子座の多様性や臨床への応用の困難さから、今でも上の4項目で診断がなされます。

遺伝子検査の結果とこの臨床診断はかなり相関しており、臨床診断の信頼性の高さを示しています。

鼻粘膜からの出血で鼻出血が、消化管からの出血で下血が起こります。出血は、子供よりも大人に多く、特に消化管出血は、年齢が上がってから、50歳以降に多いとされていますが、もちろん例外もあります。鼻出血は、HHTの90%の患者さんに認められます。
毛細血管の拡張は、思春期以降に気付かれる事が多いとされています。
女性では閉経後、鼻出血が改善することがあります。

皮膚病変は、顔面、口唇、舌、耳、結膜、体幹、四肢、手、指などに認められます。
粘膜病変からのほうが、皮膚病変より出血しやすいとされております。反復する鼻出血nose bleedingが良く認められます。
その程度は、軽症から、輸血が必要なまでのものもあります。
同じ御家族でも程度の差はあります。
消化管・呼吸器・尿路(稀です)からの出血も起こることがあります。
消化管出血の原因になる血管病変は、バリウム検査では、突出や陥没した病変がないため、検出困難であり、内視鏡をしなければ発見できません.内視鏡検査を行なっても胃炎と無視されることもありますので要注意です.消化管出血は、潰瘍のように吐血・下血の形をとらず、普段から少しずつ出血しており、検査をすると、高度の慢性貧血のことがあります.鉄欠乏性貧血になるため鉄剤を服用することがあります。


動静脈瘻(ろう)(arteriovenous fistula)とは、動脈と静脈が直接、短絡している状態で、その移行部やその末梢の静脈が大きく拡張している場合もあります。(静脈瘤varixといいます)
肺の動静脈瘻があれば、酸素化が悪いために、全身倦怠・呼吸不全・チアノーゼ、さらに喀血などを起こすことがあります。
また、肝臓や中枢神経系(脳・脊髄)でも同様に動静脈瘻が認められることがあります。
動静脈瘻が大きいと心不全を起こす場合もあります。(特に、肝臓に動静脈瘻がある場合)
HHTの患者さんの50%に、肺、脳、肝臓の少なくとも一つに病変があるとされています。

脳症状には、脳出血と脳梗塞があり、前者は脳動静脈瘻arteriovenous fistula (AVF)・脳動静脈奇形(AVM)や動脈瘤が原因で起こり、後者は肺の動静脈瘻からの塞栓症のために起こるのが原因です。
また、脳膿瘍(脳に膿が溜まる病気です)も後者で起こることがあります。
脳の血管奇形は、HHTの患者さんの10-20%に認められ、動脈と静脈が直接つながる動静脈瘻(AVF)の形をとったり、ナイダス nidusと呼ばれる異常血管構造が介在する場合があります。
後者の場合、大きさにより1 cm以下であればマイクロ血管奇形micro-AVMと呼ぶ場合があり、1cm以上の大きさの病変と区別されます。大きさが、1cm以下であれば出血する可能性は高くないこと、またMR検査で検出できいない場合もあります.逆に1cm以上の病変(nidus typeAVM)は、出血する可能性が高く、MR検査で必ず検出可能です。
小さな病変は、出血しにくいため治療の対象とはせずに、経過観察されることが多いです。
脳の動静脈瘻・動静脈奇形は、多発性の場合もあります。
肺の病変と同じように、ある時点で脳病変がなければ、新たにできることはないと考えられています。(本当にそうかは分かっていませんが)またHHTの患者さんには、頭痛が多いとされています。脳の動静脈瘻・動静脈奇形の治療は、簡単ではありません。
脳神経外科の中でも治療の難しい病気とされています。治療方法は、外科的摘出術、血管内治療、定位放射線治療があります。
定位放射線治療は、病変に高線量の放射線を照射する治療で、ガンマナイフやリニアックナイフ、サイバーナイフなどと呼ばれる方法があります。
HHTの患者さんの場合、多発例も多く、この場合には、すべて外科的にとることは非現実的ですし、1cm以下のmicroAVMの場合は、出血率が低いと考えられており、注意深い経過観察がされることが多いです。
脳梗塞の原因が肺の動静脈瘻であるにも関わらず、そのような診断されずに、一般的な脳梗塞予防の薬である抗血小板薬(アスピリンが多いです)や抗凝固薬が、投与されると消化管出血を悪化させる場合があり、重篤な貧血になる場合もあります。

皮膚病変は、レーザー治療などが行われることがあります。
電気凝固は奨められないとされています.他、ホルモン療法、止血剤の投与、軟膏の塗布なども行なわれますが、決め手に欠くのが現状です。
鼻出血で出血が止まらない場合には、血管内治療として塞栓術を行う場合がありますが、粘膜病変が消えるわけではないので、その効果は一過性です。
どうしても治療に抵抗する鼻出血に対しては、形成外科医・耳鼻科医により、粘膜病変を切除し、大腿からの植皮を行うことがあります。(サンダース法)
その適応は、鼻出血のため輸血治療を頻繁に必要としている場合で、通常この治療が行われることはありません。
この植皮にまた血管病変が起こったり、植皮でカバーできない部位からの出血が起こり、数年で再発することがあります。
また、粘膜病変を保護する目的で、外鼻孔(鼻の孔)を外科的に閉鎖することもあります。

肺の動静脈瘻は、HHTの患者さんの約30%に認められ、逆に肺の動静脈瘻があれば、その90%が、HHTと考えられています。(論文によってそのデータはまちまちですが)
つまり肺の動静脈瘻があれば、HHTの可能性が非常に高いということになります。
血管構造が単純なsimple type (80%)と複雑なcomplex type (20%)に分ける場合があります。
肺の下葉に病変があることが多いです。病変を栄養する動脈の栄養血管の太さが、3mm以上あると治療の適応があるとされています。
つまり大きなシャントがあると、そこを血栓や細菌が通り抜けやすいため閉塞した方が良いとされています。(理論的には3mmよりも小さな栄養血管の場合も、血栓や細菌が通過することがあると思います。実際、そのような患者さんもおられました)
以前は外科的治療も行われていましたが、現在は血管内治療(外科的治療とことなり、カテーテルを用いた非侵襲的な治療)が行われています。
これは、シャント部位、またはその手前の動脈を、プラチナ製の柔らかいコイルで閉塞します.
胸を開ける外科的治療を必要とせず、局所麻酔で治療可能です。また場合によっては(再発などがあれば)再治療の可能です。
栄養血管の太さが10mm以上ある大きな動静脈瘻の場合には、コイルの逸脱(シャント部位を抜けて肺静脈側、ひいては体循環の動脈側に移動してしまいます)などの合併症の可能性が高くなるため、外科的治療が選択されることもあり、最近は内視鏡下で低侵襲手術が行われます.肺の動静脈瘻があれば、歯の治療(抜歯など)、外傷や他の外科的治療を行なう場合、抗生物質の投与を必要とします。
また、この病気のある患者さんに点滴を行うときには、空気が入らないように細心の注意が必要です。
空気が、脳に飛んでいけば空気塞栓症を起こす可能性があるからです。
HHTは、家族性に発症するため家族のメンバーの一人が診断されると、文字どおり芋づる式に家族内に病変をもつ患者さんが診断されます。
HHTの10%の患者さんが、動静脈瘻・奇形のために、脳出血・脳梗塞や脳膿瘍を起こし、若年で死亡したり、大きな障害を持つことになります。
この人たちは症状を出す前に、診断されると、病変によっては予防的治療が可能になります。
そのようなスクリーニングの診断をする・しないは、個人が決めれば言い訳ですが(最終的に決めるのは医師ではなく、患者さん自身です)、予防可能な病変の検出が可能であることを、医師はきちんと説明するべきであり、説明を受けた患者さんは、親族にそのような可能性を知らせてあげるべきであると思います。
私の患者さんの一人とのお話しの中でHHTは必ず遺伝する病気で、「孫子に申し訳ない」と落ち込んでおられた方がおられました.確かに優性遺伝するため御家族に同じ病気が発症する可能性は高い(50%)のですが、「そう考えるよりも、発病する前に診断して、予防できる病変に対しては治療が可能な病気です.前向きに考えましょう」と、その患者さんとは、お話をしました。

HHTは、重症の合併症を起こすことがあるのですが、これらの多くが予防可能な疾患です。
治療を強要することはしませんが、重症の症状を呈する前に、治療することを強く御奨めします。

スクリーニングの診断:肺の動静脈瘻の検査は、超音波検査でシャントの存在を確認したり、CT検査で直接病変の検出を行います。
この際、肺は周囲に空気がありコントラストが大きいため造影剤は通常不要です。
いきなり血管撮影や造影のCT検査が必要と勘違いをしている医師も多いので要注意です。
CT検査は、薄いスライス厚で検査を行えば、詳しい解剖学的構造が分かります。
肝臓の動静脈瘻まで同時にCT検査を行なう時には、造影のCT検査を行なった方が診断的価値が高く、後者を一回で行なう方が良いと最近は考えています。
脳や脊髄の血管病変の検査は、MR検査を行います。
肝心なことは、この病気のことのわかった医師(この病気の名前は知っていても、実際、わかっていない医師が大半です.呼吸器内科の医師ですら、肺癌はよく知っていても、HHT関連の肺疾患は知らないことが多いです)に診てもらうことでしょう。
肺の病変(呼吸器内科・呼吸器外科・放射線科)、脳・脊髄の病変(脳神経外科)、鼻出血(耳鼻咽喉科)、消化管出血(消化器内科)、皮膚病変(皮膚科・形成外科)、遺伝性疾患(遺伝のカウンセリングのできる科)などと多くの科が関与しますが、全体をまとめる医師が必要で、まさにチームプレイが必要ということになります。
患者さんは、「しんどいから」内科を訪ね、子供が半身麻痺になり小児科を訪ね、鼻血が出るから耳鼻科を訪ねます。
肺の動静脈瘻の診断をしても、HHTのことを念頭に置かなければ、脳病変は浮かびません。
この病気を知らないと氷山の一角だけを見て、全体像がわからないまま、ただ時間だけが経ち、次に大きな症状が出て初めて診断されるようなことになります。

この文章は「小宮山雅樹先生のHPを参照」


「確定診断後に全身検査」は不十分です。
オスラー病/HHTでは、確定診断を待たずに、疑い例・家族歴例・遺伝子検査陰性例も含めて肺・脳・肝臓の画像検査へ進めるという設計が必要です。

特に重要なのは、次の考え方です。

HHTは、遺伝子検査で陰性でも否定できない。
Curaçao基準で疑いがある、家族歴がある、または肺動静脈瘻・脳梗塞・脳膿瘍・原因不明の貧血などがある場合は、画像検査の対象に含める。

実際、HHTの遺伝子検査はENG、ACVRL1、SMAD4などを中心に行われますが、全例を拾えるわけではありません。UCLA Healthは、遺伝子検査で確認できるのは約80%で、約20%では原因変異が見つからないと説明しています。GeneReviewsも、HHTは臨床所見と分子診断の両方で診断される疾患として整理しています。


医師、検査技師向けHHT診断・画像検査推進プロセス

1. 対象者を「確定診断者」に限定しない

画像検査の対象は、以下のすべてを含めます。

区分対象
確診例Curaçao基準3項目以上、または遺伝子検査陽性
疑診例Curaçao基準2項目
強い疑い例反復鼻出血+家族歴、または反復鼻出血+毛細血管拡張
遺伝子陰性例遺伝子検査陰性でも臨床的に疑わしい例
家族歴例親・兄弟姉妹・子にHHTまたはHHT疑いがある
合併症発症例肺動静脈瘻、若年性脳梗塞、脳膿瘍、低酸素、原因不明の貧血、消化管出血
小児・若年者症状が揃わなくても、家族歴があれば検査対象

国際HHTガイドラインでは、possible HHTまたはconfirmed HHT、つまり「疑い例または確定例」を肺AVMスクリーニング対象に含めています。Cure HHTの推奨でも、可能性のあるHHTまたは確定HHTの全例に肺AVMスクリーニングを推奨しています。


2. 肺動静脈瘻:胸部CTの撮り方・見方

基本方針

肺動静脈瘻、PAVMは、HHTで最も見逃してはいけない病変の一つです。
無症状でも、脳梗塞、脳膿瘍、低酸素、喀血、奇異性塞栓につながります。

国際ガイドラインでは、肺AVMの初期スクリーニングとして経胸壁コントラスト心エコー、TTCEが推奨されていますが、実際の病変確認・塞栓術計画には胸部CTが必要です。

CTの目的

胸部CTでは、単に「肺に影があるか」を見るのではなく、以下を確認します。

  1. 肺動静脈瘻の有無
  2. 栄養動脈の径
  3. 流出静脈の径
  4. nidus、つまり瘻の本体の大きさ
  5. 単純型か複雑型か
  6. 多発性か
  7. 以前塞栓した部位の再開通
  8. 新規病変の出現
  9. 塞栓術の対象になるか

胸部CTの撮像条件案

医療機関への依頼書には、次のように書くと実務的です。

HHT/オスラー病に伴う肺動静脈瘻の有無、栄養動脈径、流出静脈、nidus、多発病変、塞栓後再開通の評価目的。
薄切り胸部CTにて、肺野条件および縦隔条件で評価をお願いします。可能であれば1mm前後の薄いスライスで再構成し、MPR、MIP、必要に応じて3D再構成をお願いします。

具体的な撮り方

項目推奨内容
範囲肺尖部から横隔膜下まで全肺野
スライス厚1mm前後、少なくとも1〜1.25mm程度の薄切り再構成が望ましい
再構成axial、coronal、sagittalのMPR
表示条件肺野条件+縦隔条件
MIP小血管・多発病変の拾い上げに有用
造影初回評価・塞栓計画では造影CT/CTAが有用。スクリーニングや経過観察では低線量非造影CTも選択肢
評価単位肺葉ごと、区域ごと、栄養動脈径ごとに記録

近年は、HHT患者の治療対象PAVM評価において、超低線量・非造影胸部CTでも高い診断性能が報告されています。2024年の研究では、治療対象PAVMに対して超低線量非造影CTの感度100%、特異度96%と報告されています。ただし、塞栓術を計画する場合や複雑病変では造影CT/CTAが必要になることがあります。


「画像の切り方」で重要な点

HHTのPAVMでは、通常の胸部CT読影だけでは見逃されることがあります。
依頼時に、以下を明記するのが重要です。

A. 1mm前後の薄切りで切る

5mmスライスでは、小さなPAVMや複数の細い流入動脈を見落とす可能性があります。
特にHHTでは多発性・微小病変・再開通が問題になるため、薄切りが必要です。

B. axialだけでなくMPRで見る

PAVMは血管の走行を追う必要があります。
横断像だけでなく、冠状断・矢状断で見ることで、栄養動脈からnidus、流出静脈までの連続性を評価しやすくなります。

C. MIP画像を作る

MIP、最大値投影画像は、肺血管の走行や小さな血管奇形の拾い上げに有用です。
多発PAVM、末梢小病変、塞栓後の再開通評価に特に重要です。

D. 肺野条件と縦隔条件の両方で見る

肺野条件では末梢肺野の血管走行を見ます。
縦隔条件では太い血管、塞栓後コイル、流入・流出血管の関係を見ます。

E. 「結節」として終わらせない

PAVMは丸い結節のように見えることがあります。
そのため、読影依頼では、

肺結節の有無ではなく、流入動脈・流出静脈を伴う肺動静脈瘻として評価してください。

と明記する必要があります。


CT読影で記載してほしい項目

放射線科レポートに以下が入ると、その後の塞栓術判断に使えます。

記載項目内容
部位右上葉S○、左下葉S○など
個数単発、多発、無数
形態単純型、複雑型、びまん型
栄養動脈径mm単位で記載
流出静脈径mm単位で記載
nidus径可能なら記載
塞栓対象治療対象候補か
再開通既塞栓部位の再開通の有無
新規病変前回CTとの比較
右左シャント示唆TTCEや低酸素所見との整合性

PAVM治療では、かつて栄養動脈径3mm以上が塞栓対象の目安とされましたが、現在は2mm程度でも治療対象となる場合があるとされています。小さなPAVMでも合併症を起こす可能性があり、HHTでは「3mm未満だから安全」と単純には言えません。


3. 脳血管奇形:頭部MRI/MRAの撮り方・見方

基本方針

HHTでは、脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形などが問題になります。
小児では特に、HHT疑いまたは確定例に対する脳MRIスクリーニングが重視されています。Cure HHTは、可能性または確定HHTの小児に対して、生後早期または診断時に脳VMスクリーニングを行い、成長期にもフォローを検討することを示しています。

成人については国・施設により方針に差がありますが、HHT疑い、家族歴、神経症状、脳梗塞、脳膿瘍、頭痛・けいれん・視覚症状などがある場合は、頭部MRI/MRAを行う合理性があります。


頭部MRI/MRAの撮像条件案

依頼書には次のように書くとよいです。

HHT/オスラー病疑い。脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形、微小出血、陳旧性梗塞、膿瘍後変化の評価目的。頭部MRI/MRAにて、T1、T2、FLAIR、DWI、T2*またはSWI、3D TOF-MRAを含めて評価をお願いします。必要に応じて造影MRI/MRAを検討ください。

MRIで入れてほしい撮像

撮像目的
T1強調画像解剖、出血後変化、造影前後比較
T2強調画像血管奇形周囲変化、浮腫、陳旧病変
FLAIR梗塞、炎症、慢性変化、皮質・白質病変
DWI/ADC急性・亜急性脳梗塞、脳膿瘍の評価
T2*またはSWI微小出血、血管奇形、ヘモジデリン沈着の検出
3D TOF-MRA主幹動脈、AVMに関わる血流異常の評価
造影T1必要に応じて血管奇形、静脈性病変、腫瘤性病変の鑑別
造影MRA/CTA高流量病変の詳細評価

特にHHTでは、**SWIまたはT2***を入れることが重要です。
微小出血、海綿状血管奇形、過去の出血痕が通常撮像より見つかりやすくなります。


脳MRIの「画像の切り方」で重要な点

A. 薄めのスライスで全脳を評価

通常のスクリーニングMRIだけでは、小さな血管奇形が見落とされる可能性があります。
可能であれば3D撮像を含め、必要に応じて薄い再構成で見ます。

B. 後頭蓋窩・脳幹・小脳も丁寧に見る

HHTでは病変部位が限定されるわけではないため、大脳だけでなく後頭蓋窩も確認します。

C. MRAだけで陰性としない

小さなAVM、低流量病変、海綿状血管奇形はMRAだけでは見えにくいことがあります。
MRAは血流を見る検査であり、MRI本体のT2*/SWIやFLAIRと組み合わせる必要があります。

D. DSAは必要時に検討

脳血管病変では、カテーテル血管造影、DSAが最も詳細ですが、侵襲があります。
MRI/MRAで疑わしい病変がある場合、治療方針を決める段階で脳血管内治療専門医が判断します。2025年のレビューでも、MRI単独では一部の高流量病変が過小検出される可能性があり、DSAが最も感度の高い検査であることが指摘されています。


脳MRI/MRAレポートで記載してほしい項目

記載項目内容
AVMの有無nidus、流入動脈、流出静脈
AVFの有無硬膜動静脈瘻など
海綿状血管奇形SWI/T2*で評価
微小出血部位・数
陳旧性梗塞特にPAVM由来の奇異性塞栓の可能性
急性梗塞DWI高信号の有無
脳膿瘍既往・疑い所見
治療要否脳外科・血管内治療への紹介要否

4. 肝血管奇形:腹部超音波・ドプラ検査の方法

基本方針

HHT、とくにHHT2、ACVRL1関連では肝血管奇形が多く、
高拍出性心不全、肺高血圧、門脈圧亢進、胆道障害につながることがあります。

肝病変は、単なる「肝腫瘍の有無」や「脂肪肝の有無」を見る通常腹部エコーでは不十分です。
HHT肝血管奇形を意識したカラードプラ・パルスドプラ評価が必要です。

2023年の肝HHT管理レビューでは、ドプラ超音波は肝血管奇形の重症度分類に有用で、肝動脈径、最高血流速度、抵抗指数、肝内過血流、肝静脈・門脈の拡張や流れの異常などを評価項目としています。


肝臓エコー依頼書の書き方

通常の「腹部エコーお願いします」では不十分です。
次のように書くのが重要です。

HHT/オスラー病に伴う肝血管奇形の評価目的。通常の腹部超音波に加え、カラードプラおよびパルスドプラで、固有肝動脈・総肝動脈径、肝動脈血流速度、抵抗指数、肝内血管過形成、肝静脈拡張、門脈拡張・拍動性変化、動脈門脈シャント、動脈肝静脈シャントの有無を評価してください。


肝ドプラ超音波で見る項目

評価項目見る理由
総肝動脈・固有肝動脈径肝血管奇形で拡張する
肝動脈最高血流速度高流量化の評価
肝動脈RI抵抗指数。低下・異常でシャントを示唆
肝内動脈の過形成肝内血管奇形の広がり
カラードプラのモザイク血流高速・乱流の示唆
肝静脈拡張動脈肝静脈シャントを示唆
門脈拡張門脈系への影響
門脈拍動性動脈門脈シャントを示唆
胆管拡張・胆道障害重症肝病変で問題になる
心拡大・心不全所見高拍出性心不全の評価につながる

肝動脈径については、肝動脈拡張が早期の肝病変検出に有用とされ、2023年レビューでは肝動脈径4mm超がHHT肝病変の感度の高い指標と説明されています。別の超音波診断基準では総肝動脈径7mm超や肝内過血流が有用と報告されています。


肝エコーの実施手順案

1. Bモードで全体を見る

まず通常の腹部エコーとして、以下を確認します。

  • 肝腫大
  • 肝実質の不均一
  • 結節性病変
  • 胆管拡張
  • 門脈径
  • 肝静脈径
  • 腹水
  • 脾腫

2. カラードプラを必ず入れる

HHT肝病変では、肝内に異常な高血流が出ることがあります。

確認する所見は、

  • 肝内動脈の目立つ増生
  • モザイク状血流
  • 肝動脈から門脈へのシャント
  • 肝動脈から肝静脈へのシャント
  • 門脈の拍動性
  • 肝静脈の動脈化

です。

3. パルスドプラで数値化する

単に「血流豊富」と書くだけでは不十分です。
可能な限り数値化します。

測定部位記録項目
総肝動脈径、最高血流速度、RI
固有肝動脈径、最高血流速度、RI
門脈本幹径、流速、拍動性
肝静脈拡張、波形異常
脾静脈門脈圧亢進の補助評価

4. 重症度を分類する

HHT肝血管奇形は、軽度・中等度・重度に分類できるように評価します。
Buscariniらの研究では、ドプラ超音波によりHHT肝血管奇形を分類でき、フォローや治療計画に活用できると報告されています。


5. 肝病変では心エコーもセットにする

肝血管奇形は、肝臓だけの問題ではありません。
肝臓内のシャントにより血流量が増えると、心臓に負担がかかり、高拍出性心不全肺高血圧につながります。

そのため、肝病変がある、または疑われる場合は、

  • 心エコー
  • BNP/NT-proBNP
  • 心拍出量
  • 右心負荷
  • 推定肺動脈圧
  • 左房・左室拡大
  • 弁膜症の有無

を確認する必要があります。

肝血管奇形を有するHHT患者では高拍出性心不全が問題となり、心エコーは重症度評価に有用とされています。


6. 実務上の検査セット案

A. HHT疑い例・家族歴例の初回検査セット

検査内容
胸部CT薄切りCT、PAVM評価
頭部MRI/MRAAVM、AVF、微小出血、梗塞評価
腹部エコー+カラードプラ肝血管奇形評価
心エコー肺高血圧、高拍出性心不全、右左シャント補助評価
血液検査Hb、MCV、鉄、フェリチン、TIBC、肝胆道系、BNP
必要時造影CT、造影MRI、CTA、MRA、消化管内視鏡

B. 肺動静脈瘻が疑われる場合

段階検査
スクリーニング経胸壁コントラスト心エコー、SpO2
病変確認薄切り胸部CT
治療計画造影CT/CTA、3D再構成
治療後6〜12か月後CTまたは施設方針でフォロー
長期再開通・新規病変確認

Cure HHTは、肺AVMスクリーニングを小児では3〜5年ごとに行うと説明しており、実務レビューでは陰性後の再検査を小児5年、成人5〜10年程度で行うと整理されています。


C. 脳病変が疑われる場合

段階検査
初回頭部MRI/MRA
必須シーケンスDWI、FLAIR、T2*またはSWI、MRA
疑わしい場合造影MRI/MRA、CTA
治療判断脳血管内治療医・脳外科でDSA検討

D. 肝病変が疑われる場合

段階検査
初回腹部エコー+カラードプラ+パルスドプラ
評価項目肝動脈径、血流速度、RI、門脈、肝静脈、シャント
重症度評価心エコー、BNP、肝胆道系酵素
詳細評価造影CT、造影MRI
フォロー症状・心負荷・血流所見に応じて定期評価

7. 医療機関への依頼文に入れるべき一文

患者会・紹介状・行政資料では、次の一文が重要です。

オスラー病/HHTは、Curaçao基準で確定に至らない疑診例、家族歴を有する未発症例、また遺伝子検査陰性例であっても、肺動静脈瘻、脳血管奇形、肝血管奇形等を合併し得るため、確定診断を待たず、臨床的疑いの段階から全身血管奇形の画像スクリーニングを実施する必要がある。


8. 検査依頼書テンプレート

胸部CT依頼文

オスラー病/HHT疑い、または家族歴あり。肺動静脈瘻のスクリーニングおよび治療適応評価をお願いします。
1mm前後の薄切り胸部CT再構成にて、肺野条件・縦隔条件、MPR、MIPを作成し、肺動静脈瘻の有無、部位、個数、栄養動脈径、流出静脈径、nidus径、単純型・複雑型、多発性、塞栓術対象の有無を評価してください。
既塞栓例では再開通および新規病変の有無も評価してください。

頭部MRI/MRA依頼文

オスラー病/HHT疑い、または家族歴あり。脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形、微小出血、脳梗塞、脳膿瘍関連病変の評価をお願いします。
T1、T2、FLAIR、DWI/ADC、T2*またはSWI、3D TOF-MRAを含めて撮像し、必要に応じて造影MRI/MRAまたはCTAをご検討ください。

肝臓エコー依頼文

オスラー病/HHTに伴う肝血管奇形の評価をお願いします。通常の腹部エコーに加え、カラードプラおよびパルスドプラにて、総肝動脈・固有肝動脈径、最高血流速度、抵抗指数、肝内過血流、肝動脈−門脈シャント、肝動脈−肝静脈シャント、門脈拡張・拍動性、肝静脈拡張・波形異常、胆管拡張、肝腫大、脾腫、腹水の有無を評価してください。
肝血管奇形が疑われる場合は、心エコーによる高拍出性心不全・肺高血圧評価も併せてご検討ください。


9. プロセス表現

「確定診断後は全身検査を必須化する」

HHTでは、確定診断後に限らず、疑診例、家族歴例、遺伝子検査陰性でも臨床的に疑わしい例を含め、肺・脳・肝臓を中心とした全身血管奇形スクリーニングを実施する。特に肺動静脈瘻は脳梗塞・脳膿瘍等の予防可能な重篤合併症につながるため、診断確定を待たずに画像検査へ進める。