オスラー病患者の多くに日々くり返す鼻血があります。
その治療として耳鼻科で止血するため電気焼灼術やレーザー治療をされますが、くり返すことで鼻中隔穿孔(穴があく)になり、止血困難になっている患者からの相談があります。
このような状況になると、自己ケアで止血困難になり、重症の貧血や救急搬送をくり返すことになります。
日本HHT研究会の専門医からも、急性期(生命にかかる状況)以外では、電気焼灼術やレーザー治療は避けるべきであるとアドバイスされています。

HHTQ&A50には、多くの情報が記載されていますから活用ください。

HHTQ&A50より(P16~P17)

Q27.鼻の中の出血しそうな病変を毎回、焼いてもらっていますが、これでいいのでしょうか? 繰り返すことで止血困難になりますか?

A27. 条件付きで、はい.
オスラー病の鼻出血で病院を救急受診して、担当医がオスラー病と知らずに電気焼灼しても止血に有効でないばかりか、後述する鼻中隔穿孔の合併症が生じたり、治療後にかえって悪化する場合もあるので、注意が必要です.オスラー病の繰り返す慢性的な鼻出血に対しての焼灼処置はある程度有効とされています1).ただ、一旦焼灼治療を行っても、焼いた部分の鼻粘膜が治癒する過程で、再度、新たに異常な血管が鼻粘膜に出現するため、繰り返し焼くことが必要となります.繰り返すことで、止血困難になるということはありませんが、オスラー病による鼻出血は年齢とともに徐々に悪化していくことが多いため、繰り返しているうちに止血困難になったと感じる患者さんもおられるかもしれません.
また、焼灼治療は、鼻出血が軽症の段階で早期に開始しすぎると、むしろ悪化してしまう場合もあります. 治療の開始時期は専門家と相談の上で決定する必要があります(Q26参照).
オスラー病による鼻出血には、軽症例から重症例まで、鼻内の乾燥予防を行うことが基本的に重要です.面倒と感じて怠りがちですが、繰り返し焼いてもらっている間も、軟膏を塗る、鼻孔に綿球をいれるなどのケアを併用することで、焼く回数、頻度を減らせる可能性があります.

焼灼治療には、鼻中隔穿孔という合併症の問題もあります(Q26参照).左右の鼻孔の間にある鼻中隔という構造(壁)に穴があいてしまうことをいいます.電気で焼く際に、鼻内の両面を強く焼いてしまうなどが原因とされています.特にモノポーラというタイプの電気メスで焼くと、その可能性が高いため、モノポーラタイプの電気メスは使わない方がよいとされています.一度鼻中隔に穿孔が生じると、気流などの問題から痂皮がつきやすくなり、鼻出血が悪化しやすくなります.そのため、鼻中隔穿孔をきたさないように慎重に焼灼を行うことが必要です.鼻中隔に穿孔をきたさず、出血部の鼻粘膜を焼くための器具として、以前は
KTPレーザーが最もよいとされていました.粘膜の深い部分まではレーザーが浸透しないためです.しかし現在は世界中で販売が終了し、修理部品も製造されていないため、現在使われている施設でも故障すると使用できなくなります.そのため、現在はバイポーラ電気メス、特に低温で焼けるタイプのバイポーラ電気メスが使われることが多くなっています.筆者個人としても、以前はKTPレーザーを用いていましたが、これらのバイポーラ電気メスのほうが、KTPレーザーよりも効果が高いという印象をもっており、KTPレーザーがなくなると困るということはありません.

1) Faughnan ME, et al: International guidelines for the diagnosis and management of hereditary haemorrhagic telangiectasia. J Med Genet 48:73–87, 2011

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