― 重症鼻出血に苦しむ患者さんにとって、大きな一歩となる承認です ―
特定非営利活動法人日本オスラー病患者会では、これまでオスラー病/HHTの重症鼻出血に対する止血材「サージセル」の安定的な使用に向けて、患者さんの声を集め、関係機関への要望活動を続けてまいりました。
このたび、ジョンソン・エンド・ジョンソン社より、サージセルについて医療機器の一部変更承認、いわゆる効能追加承認が2026年5月13日付けで確認されたとの連絡を受けました。
これは、オスラー病/HHT患者の鼻:口腔・体幹・皮膚の毛細血管拡張からの出血にとって、非常に大きな前進です。
オスラー病の鼻出血は、特に一般的な「鼻血」とは異なります
オスラー病/HHTは、正式には遺伝性出血性毛細血管拡張症と呼ばれる指定難病です。
鼻、口腔、肺、脳、肝臓、消化管など、全身の血管に異常を生じる疾患であり、特に鼻腔内には多数の毛細血管拡張や血管奇形が生じることがあります。
そのため、オスラー病患者さんの鼻出血は、一般に想定される「単なる鼻血」ではありません。
患者さんによっては、毎日のように出血を繰り返し、貧血、救急搬送、輸血、就労・通学困難、外出不安、睡眠障害など、生活全体に深刻な影響を及ぼします。
当会では、オスラー病の鼻出血について、単なる鼻血ではなく、「鼻腔内における多発性血管奇形・毛細血管拡張からの出血」として理解する必要があると考えています。
サージセルとは
サージセルは、医療現場で止血目的に使用されてきた酸化セルロース系の止血材です。
オスラー病患者さんの中には、重症鼻出血時にサージセルを使用することで、出血を落ち着かせ、救急搬送や過度な処置を避けられてきた方が少なくありません。
特にオスラー病では、鼻腔内の血管が非常に脆く、強い圧迫、ガーゼパッキング、電気焼灼、レーザー処置などが、かえって出血部位を傷つけ、さらなる出血につながることがあります。
そのため、患者さんの状態によっては、サージセルのような止血材を用いた、できるだけ負担の少ない止血対応が重要になります。
今回の効能追加承認の意義
今回の効能追加承認は、サージセルがオスラー病/HHT患者さんの重症鼻出血対策として位置づけられていくうえで、大きな意味を持ちます。
通常、医療機器や薬剤の効能追加には、医学的妥当性、安全性、有効性、使用方法、保険適用上の整理など、さまざまな確認が必要となります。
その中で、今回の承認が短期間で確認されたことは、オスラー病患者さんの重症鼻出血が、単なる不便や日常的な症状ではなく、生命維持や生活の質に関わる重要な医療課題であることが、関係機関に伝わった結果であると受け止めています。
当会としても、これまで患者さんから寄せられた切実な声、実態調査、署名活動、関係機関への要望、医療者への説明活動を通じて、サージセルの必要性を訴えてまいりました。
今回の承認は、患者さん、ご家族、医療関係者、企業、行政のそれぞれの取り組みが重なった成果であり、患者会としても大変重要な一歩であると考えています。
ただし、承認だけで全てが解決したわけではありません
今回確認されたのは、医療機器としての効能追加承認です。
一方で、患者さんが実際に医療機関や薬局を通じて、健康保険や特定医療費制度のもとで安定的にサージセルを使用できるようになるためには、今後さらに整理すべき課題があります。
これについては患者会会員メールやグループLINEで経過を速報します。
主な課題は次のとおりです。
- 保険収載の時期
- C1区分としての取り扱い
- 指定難病227・特定医療費との関係
- 在宅での止血処置としての位置づけ
- 医療機関での処方・管理方法
- 薬局での取り扱い
- 保管方法や使用方法の周知
- 耳鼻咽喉科、救急医療、かかりつけ医への情報共有
つまり、今回の承認は大きな前進ですが、患者さんが全国どこでも安心してサージセルを使用できる体制をつくるためには、保険適用と現場運用の整備が必要です。
患者会としての今後の取り組み
日本オスラー病患者会では、今後の正式な保険適用・運用開始に向けて、会員の皆さまに対し、かかりつけ医療機関、担当医、受診科、かかりつけ薬局などの情報確認を進めています。
これは、正式に制度が整った後も、その情報が全国の医療機関や薬局に届くまでには一定の時間がかかると考えられるためです。
重症患者さんが必要な止血材を途切れなく使用できるよう、患者会としても、関係企業、医療関係者、行政機関と連携しながら、できる限り早期に実際の使用体制が整うよう取り組んでまいります。
また、医療関係者に対しても、オスラー病の鼻出血は一般的な鼻血とは異なること、鼻腔内の多発性血管奇形・毛細血管拡張からの出血であること、患者さんによってはサージセルによる止血対応が重要であることを、引き続き啓発してまいります。
会員の皆さまへ
今回の効能追加承認は、患者さんにとって大きな希望となる一歩です。
しかし、保険適用や実際の運用が整うまでには、もう少し時間を要する可能性があります。
現在、重症鼻出血によりお困りの方、サージセルの使用継続に不安がある方、かかりつけ医や薬局への説明に困っている方は、患者会までご相談ください。
患者会として、今後も必要な情報を整理し、会員の皆さまに随時お知らせしてまいります。
医療関係者の皆さまへ
オスラー病/HHTの鼻出血は、一般的な鼻出血とは病態が異なります。
鼻腔内に多発する毛細血管拡張・血管奇形からの出血であり、患者さんによっては、強い処置や過度な刺激によって出血が悪化する場合があります。
重症患者さんにとって、サージセルによる止血対応は、出血コントロール、貧血悪化の防止、救急搬送の回避、生活の質の維持に関わる重要な選択肢です。
今後、保険適用や運用方法が整理され次第、患者会としても医療関係者の皆さまに情報提供を行ってまいります。
最後に
今回のサージセル効能追加承認は、オスラー病/HHT患者さんの長年の困難に対し、社会が一歩前に進んだ重要な出来事です。
しかし、患者さんにとって本当に大切なのは、承認されたという事実だけではなく、必要な時に、必要な患者さんが、安心して使用できる体制が整うことです。
日本オスラー病患者会は、今後も患者さんの命と生活を守るため、医療機関、企業、行政、関係団体と連携しながら、サージセルの安定的な使用体制の確立に向けて取り組んでまいります。
特定非営利活動法人 日本オスラー病患者会
理事長 村上 匡寛

