以下は、肺動静脈瘻(PAVM)がある患者に対するものです
視野が欠ける・ギラギラする・頭がぼーっとする時に知っておきたいこと
脳梗塞というと、手足の麻痺やろれつが回らない症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、脳の後ろ側にある後頭葉に脳梗塞が起こると、主に目の見え方の異常として症状が出ることがあります。
後頭葉は、目から入った情報を脳で処理する場所です。
そのため、目そのものに異常がなくても、脳の障害によって「見えにくい」「視野が欠ける」「ギラギラする」「文字が読みにくい」といった症状が起こることがあります。
後頭葉脳梗塞で起こりやすい症状
後頭葉の脳梗塞では、次のような症状が出ることがあります。
- 視野の右側または左側が見えにくい
- 両目で同じ側の視野が欠ける
- 人や物にぶつかりやすい
- 文字が読みにくい
- スマートフォンや本の文字を追いにくい
- ギラギラ、チカチカした光が見える
- 物の位置が分かりにくい
- 頭がぼーっとする
- 強い疲労感がある
- 食欲が落ちる
特に、両目で同じ側の視野が欠ける状態は同名半盲と呼ばれます。脳卒中後の視覚障害として知られており、見えない側の物や人に気づきにくくなるため、日常生活や歩行にも影響します。
片頭痛の閃輝暗点と似ていることがあります
後頭葉の脳梗塞では、ギラギラ・チカチカする見え方が出ることがあり、片頭痛の閃輝暗点と似ている場合があります。
しかし、次のような場合は、片頭痛と決めつけず、脳梗塞や一過性脳虚血発作、いわゆるTIAを疑う必要があります。
- 初めて起きた視覚異常
- いつもと違う見え方
- 数十分以上、または数時間続く
- 視野の一部が欠ける
- 文字が急に読めない
- ふらつきやろれつの異常がある
- 手足のしびれや力の入りにくさがある
症状が一時的に治まっても、TIAの場合はその後に本格的な脳梗塞につながることがあります。
すぐ救急相談が必要な症状
次の症状が突然出た場合は、119番で救急搬送を検討してください。
- 視野の半分が急に見えない
- ギラギラ・チカチカが長く続く
- 片側にある物や人に気づかない
- 文字が急に読めない
- ろれつが回らない
- 片側の手足に力が入らない
- 強いめまいや歩行困難がある
- 意識がぼんやりする
- 強い頭痛や嘔吐がある
脳梗塞では、発症から時間が短い場合、血栓を溶かす治療であるt-PA治療が検討されることがあります。日本では発症後4.5時間以内が重要な目安とされています。
ただし、4.5時間を過ぎた場合でも、専門病院での評価や治療が重要です。
治療法はあります
後頭葉の脳梗塞にも治療法があります。
治療は、発症からの時間や血管の詰まり方、脳出血がないかどうかによって変わります。
急性期には、
- 血栓を溶かす点滴治療
- カテーテルによる血栓回収療法
- 脳浮腫や血圧の管理
- 再発予防の薬
- 原因検索
などが行われます。
発症後は、再発予防として、血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈、脱水、貧血などの管理も重要になります。
後遺症は改善できることがあります
後頭葉脳梗塞の後遺症として多いのは、視野障害です。
視野そのものが完全に戻らない場合もありますが、生活の不自由を減らす訓練は可能です。
代表的なリハビリには、
- 見えにくい側を意識して見る訓練
- 目や首を大きく動かす訓練
- 読字訓練
- 歩行時の安全確認訓練
- 家の中の環境調整
- スマホや文字を見やすくする工夫
があります。
視野が欠けた側を見るために、意識的に目を動かす訓練は視覚探索訓練と呼ばれ、脳卒中後の半盲に対するリハビリ方法として用いられています。
発症後に頭がぼーっとすることもあります
脳梗塞後には、頭がぼーっとする、集中できない、眠い、考えがまとまらない、疲れやすいといった症状が出ることがあります。
これは、脳梗塞後の疲労、視野障害による脳の疲れ、薬の影響、脱水、貧血などでも起こります。
ただし、次のような場合は注意が必要です。
- ぼーっとする状態が悪化している
- 呼びかけへの反応が鈍い
- 新しい視野障害が出た
- 頭痛や嘔吐がある
- 発熱がある
- けいれんのような症状がある
- SpO₂が普段より低い
- 貧血症状が強い
このような場合は、主治医または救急に相談してください。
発症後に食欲が落ちることもあります
脳梗塞後は、食欲が落ちることもあります。
原因としては、脳と身体の疲労、吐き気、薬の影響、嚥下障害、脱水、低栄養、感染症などが考えられます。
特に注意が必要なのは、
- 水分が取れない
- 尿が少ない
- むせる
- 飲み込みにくい
- 発熱がある
- 意識がぼんやりする
- 食事量が急に減った
- 体重が減っている
といった場合です。
脳卒中後の嚥下障害は、低栄養や脱水につながることがあり、必要に応じて嚥下評価や栄養管理が重要になります。
数ヶ月前からの疲れやすさは前兆ですか
数ヶ月前から疲れやすかった、というだけでは、脳梗塞の直接の前兆とは言い切れません。
脳梗塞の前兆として重要なのは、突然出て一時的に消える視野障害、麻痺、しびれ、言葉の異常、ふらつきなどです。
ただし、オスラー病/HHTの患者さんでは、疲れやすさが背景リスクのサインである場合があります。
例えば、
- 鼻出血や消化管出血による貧血
- 鉄欠乏
- 肺動静脈奇形による低酸素
- 右左シャントによる塞栓リスク
- 感染症
- 脳膿瘍の前段階
などです。
特にHHTでは、肺動静脈奇形があると、肺の毛細血管を通らずに血栓や細菌が脳へ到達し、脳梗塞や脳膿瘍のリスクになることがあります。HHT患者では肺動静脈奇形が重要な合併症であり、脳合併症のリスクと関連することが報告されています。
オスラー病/HHT患者さんで特に大切なこと
オスラー病/HHTでは、脳梗塞が起きた場合、一般的な動脈硬化や不整脈だけでなく、HHT特有の原因も考える必要があります。
特に確認したい項目は、
- 肺動静脈奇形/PAVM
- 右左シャント
- SpO₂低下
- 脳血管奇形
- 脳膿瘍
- 貧血・鉄欠乏
- 脱水
- 不整脈
- 深部静脈血栓
です。
HHTでは肺動静脈奇形のスクリーニングが重要とされており、肺動静脈奇形がある場合には専門的な評価と治療が必要になります。
医師に伝えるとよい言葉
受診時には、次のように伝えると要点が伝わりやすくなります。
オスラー病/HHTがあります。後頭葉の脳梗塞、または一過性脳虚血発作が心配な視覚症状があります。視野障害、頭がぼーっとする症状、食欲低下があります。肺動静脈奇形による右左シャント、塞栓症、脳膿瘍、貧血、低酸素の可能性も含めて評価をお願いします。
必要に応じて、
頭部MRI、MRAまたはCTA、心電図、不整脈評価、血液検査、Hb・フェリチン、SpO₂、肺動静脈奇形・右左シャント評価も相談したいです。
と伝えるとよいでしょう。
まとめ
後頭葉の脳梗塞は、手足の麻痺ではなく、見え方の異常として現れることがあります。
特に、
- 視野が欠ける
- ギラギラが長く続く
- 文字が読めない
- 片側に気づかない
- 頭がぼーっとする
- 食欲が落ちる
- 強い疲労感がある
といった症状がある場合は、自己判断せず、脳神経内科・脳神経外科で相談することが大切です。
オスラー病/HHTの患者さんでは、肺動静脈奇形、右左シャント、貧血、低酸素、脳膿瘍など、一般的な脳梗塞とは異なる背景が関係することがあります。
「片頭痛だろう」「疲れているだけだろう」と決めつけず、早めに専門医療機関へ相談してください。
※この記事は患者さんとご家族向けの一般的な情報です。実際の診断・治療は、症状、発症時刻、画像検査、持病、服薬状況により異なります。急な視野障害や意識の変化がある場合は、救急相談または119番を検討してください。


