「PPI(Patient and Public Involvement:患者・市民参画)」という言葉をご存知でしょうか。
厚生労働省や関連機関(AMED、PMDAなど)が推進する「PPI」は、医学研究や医療政策において、患者を単なる「研究対象(被験者)」や「サービスの受け手」ではなく、「協働するパートナー」として位置づける概念です。
特定非営利活動法人日本オスラー病患者会では、PPIを「患者やその家族が、単に医療を受ける側(対象者)として受け身でいるのではなく、医学研究や国の医療政策を決定するプロセスに協働するパートナーとして直接参画していく新しい仕組み」と捉え、取り組んでいます。
なぜ、私たちの「声」が必要なのか?
私たちが直面している疾患の現場では、一般的な対症療法や処置が、必ずしも一人ひとりの体に適しているとは限りません。症状に合わない過度な介入は、かえって大きな負担となるケースがあります。
だからこそ、「過度な負担を避け、より低負荷なケアを標準化していく必要がある」という、患者自身が日々体感しているリアルな経験知が不可欠なのです。医療者の専門知と当事者の経験知を持ち寄ることで、本当に必要なケアの指針を共に導き出すことができます。
当会のPPIへのアプローチ
当会は2012年の発足以来、患者同士の支え合い(ピアサポート)を大切にしてきました。そして現在、その歩みは次のステージへと進んでいます。
大学の専門的な医科学研究グループと連携し、患者の皆さんが抱える日々の課題を「医学的な研究テーマ」として共有しています。私たちが集めた声や実態は、新しい治療法やケアのガイドラインを創るための「極めて価値の高いエビデンス(根拠)」として、研究者や厚生労働省などの行政機関へ届けられています。
「患者アドボカシー」とは?
アドボカシー(Advocacy)とは、「擁護」「代弁」「政策提言」を意味する言葉です。患者アドボカシーとは、患者が自らの権利や必要としている医療を守るために、その声を医療者・研究者・行政・社会へ届け、より良い医療や制度の実現を働きかけていく活動を指します。
PPIが「研究や政策の側が患者を招き入れる仕組み」だとすれば、患者アドボカシーは「患者の側から声を上げ、変化を起こしていく力」です。この二つは車の両輪であり、どちらが欠けても患者に本当に適した医療は実現しません。
患者アドボカシーの3つのかたち
- セルフ・アドボカシー(自分のために)
自分の病気を正しく理解し、医療者に必要な情報を伝え、納得できる治療を選ぶこと。 - ピア・アドボカシー(仲間のために)
患者同士が経験や知識を分かち合い、支え合うこと。一人では言いにくいことも、仲間の声と重なることで大きな力になります。 - システム・アドボカシー(社会のために)
患者会として実態を集め、治療薬・医療材料の承認、診療ガイドライン、医療制度などについて、行政や学会へ提言していくこと。
当会のアドボカシー活動
オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症:HHT)は指定難病227に指定されている希少疾患ですが、医師や医療関係者の間でもまだ十分に知られていません。だからこそ当会は、患者の声を形にする活動に力を入れてきました。
- 止血材「サージセル」の承認に向けて、患者会が主導して働きかけを行いました。
- 鼻出血などに患者自身が対処できるよう、患者会独自の「止血ガイドブック」を作成しました。
- 日本HHT研究会と合同で診療ガイドラインを作成し、研究班にも患者会として参加しています。
今日からできるセルフ・アドボカシー
初めての医療機関や救急外来では、「指定難病227のオスラー病(HHT)です」と病名をはっきり伝え、止血ガイドブックや受診歴のメモを持参しましょう。過去に負担が大きかった処置や、効果があった対処法を伝えることも、立派なアドボカシーの一歩です。
あなたの経験が、未来の医療を変えます
あなたのこれまでの経験や、日々の生活の中で感じている困難は、未来の医療をより良くするための「大切なデータ」です。
全国で開催している学習交流会は、単なる情報交換の場にとどまらず、新しい医療のカタチを創るための第一歩です。ぜひ、あなたの声をお聞かせください。私たちに本当に適した医療を、共に創っていきましょう。

