1. 対象者を「確定診断者」に限定しない

画像検査の対象は、以下のすべてを含めます。

区分対象
確診例Curaçao基準3項目以上、または遺伝子検査陽性
疑診例Curaçao基準2項目
強い疑い例反復鼻出血+家族歴、または反復鼻出血+毛細血管拡張
遺伝子陰性例遺伝子検査陰性でも臨床的に疑わしい例
家族歴例親・兄弟姉妹・子にHHTまたはHHT疑いがある
合併症発症例肺動静脈瘻、若年性脳梗塞、脳膿瘍、低酸素、原因不明の貧血、消化管出血
小児・若年者症状が揃わなくても、家族歴があれば検査対象

国際HHTガイドラインでは、possible HHTまたはconfirmed HHT、つまり「疑い例または確定例」を肺AVMスクリーニング対象に含めています。Cure HHTの推奨でも、可能性のあるHHTまたは確定HHTの全例に肺AVMスクリーニングを推奨しています。


2. 肺動静脈瘻:胸部CTの撮り方・見方

基本方針

肺動静脈瘻、PAVMは、HHTで最も見逃してはいけない病変の一つです。
無症状でも、脳梗塞、脳膿瘍、低酸素、喀血、奇異性塞栓につながります。

国際ガイドラインでは、肺AVMの初期スクリーニングとして経胸壁コントラスト心エコー、TTCEが推奨されていますが、実際の病変確認・塞栓術計画には胸部CTが必要です。

CTの目的

胸部CTでは、単に「肺に影があるか」を見るのではなく、以下を確認します。

  1. 肺動静脈瘻の有無
  2. 栄養動脈の径
  3. 流出静脈の径
  4. nidus、つまり瘻の本体の大きさ
  5. 単純型か複雑型か
  6. 多発性か
  7. 以前塞栓した部位の再開通
  8. 新規病変の出現
  9. 塞栓術の対象になるか

胸部CTの撮像条件案

医療機関への依頼書には、次のように書くと実務的です。

HHT/オスラー病に伴う肺動静脈瘻の有無、栄養動脈径、流出静脈、nidus、多発病変、塞栓後再開通の評価目的。
薄切り胸部CTにて、肺野条件および縦隔条件で評価をお願いします。可能であれば1mm前後の薄いスライスで再構成し、MPR、MIP、必要に応じて3D再構成をお願いします。

具体的な撮り方

項目推奨内容
範囲肺尖部から横隔膜下まで全肺野
スライス厚1mm前後、少なくとも1〜1.25mm程度の薄切り再構成が望ましい
再構成axial、coronal、sagittalのMPR
表示条件肺野条件+縦隔条件
MIP小血管・多発病変の拾い上げに有用
造影初回評価・塞栓計画では造影CT/CTAが有用。スクリーニングや経過観察では低線量非造影CTも選択肢
評価単位肺葉ごと、区域ごと、栄養動脈径ごとに記録

近年は、HHT患者の治療対象PAVM評価において、超低線量・非造影胸部CTでも高い診断性能が報告されています。2024年の研究では、治療対象PAVMに対して超低線量非造影CTの感度100%、特異度96%と報告されています。ただし、塞栓術を計画する場合や複雑病変では造影CT/CTAが必要になることがあります。


「画像の切り方」で重要な点

HHTのPAVMでは、通常の胸部CT読影だけでは見逃されることがあります。
依頼時に、以下を明記するのが重要です。

A. 1mm前後の薄切りで切る

5mmスライスでは、小さなPAVMや複数の細い流入動脈を見落とす可能性があります。
特にHHTでは多発性・微小病変・再開通が問題になるため、薄切りが必要です。

B. axialだけでなくMPRで見る

PAVMは血管の走行を追う必要があります。
横断像だけでなく、冠状断・矢状断で見ることで、栄養動脈からnidus、流出静脈までの連続性を評価しやすくなります。

C. MIP画像を作る

MIP、最大値投影画像は、肺血管の走行や小さな血管奇形の拾い上げに有用です。
多発PAVM、末梢小病変、塞栓後の再開通評価に特に重要です。

D. 肺野条件と縦隔条件の両方で見る

肺野条件では末梢肺野の血管走行を見ます。
縦隔条件では太い血管、塞栓後コイル、流入・流出血管の関係を見ます。

E. 「結節」として終わらせない

PAVMは丸い結節のように見えることがあります。
そのため、読影依頼では、

肺結節の有無ではなく、流入動脈・流出静脈を伴う肺動静脈瘻として評価してください。

と明記する必要があります。


CT読影で記載してほしい項目

放射線科レポートに以下が入ると、その後の塞栓術判断に使えます。

記載項目内容
部位右上葉S○、左下葉S○など
個数単発、多発、無数
形態単純型、複雑型、びまん型
栄養動脈径mm単位で記載
流出静脈径mm単位で記載
nidus径可能なら記載
塞栓対象治療対象候補か
再開通既塞栓部位の再開通の有無
新規病変前回CTとの比較
右左シャント示唆TTCEや低酸素所見との整合性

PAVM治療では、かつて栄養動脈径3mm以上が塞栓対象の目安とされましたが、現在は2mm程度でも治療対象となる場合があるとされています。小さなPAVMでも合併症を起こす可能性があり、HHTでは「3mm未満だから安全」と単純には言えません。


3. 脳血管奇形:頭部MRI/MRAの撮り方・見方

基本方針

HHTでは、脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形などが問題になります。
小児では特に、HHT疑いまたは確定例に対する脳MRIスクリーニングが重視されています。Cure HHTは、可能性または確定HHTの小児に対して、生後早期または診断時に脳VMスクリーニングを行い、成長期にもフォローを検討することを示しています。

成人については国・施設により方針に差がありますが、HHT疑い、家族歴、神経症状、脳梗塞、脳膿瘍、頭痛・けいれん・視覚症状などがある場合は、頭部MRI/MRAを行う合理性があります。


頭部MRI/MRAの撮像条件案

依頼書には次のように書くとよいです。

HHT/オスラー病疑い。脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形、微小出血、陳旧性梗塞、膿瘍後変化の評価目的。頭部MRI/MRAにて、T1、T2、FLAIR、DWI、T2*またはSWI、3D TOF-MRAを含めて評価をお願いします。必要に応じて造影MRI/MRAを検討ください。

MRIで入れてほしい撮像

撮像目的
T1強調画像解剖、出血後変化、造影前後比較
T2強調画像血管奇形周囲変化、浮腫、陳旧病変
FLAIR梗塞、炎症、慢性変化、皮質・白質病変
DWI/ADC急性・亜急性脳梗塞、脳膿瘍の評価
T2*またはSWI微小出血、血管奇形、ヘモジデリン沈着の検出
3D TOF-MRA主幹動脈、AVMに関わる血流異常の評価
造影T1必要に応じて血管奇形、静脈性病変、腫瘤性病変の鑑別
造影MRA/CTA高流量病変の詳細評価

特にHHTでは、**SWIまたはT2***を入れることが重要です。
微小出血、海綿状血管奇形、過去の出血痕が通常撮像より見つかりやすくなります。


脳MRIの「画像の切り方」で重要な点

A. 薄めのスライスで全脳を評価

通常のスクリーニングMRIだけでは、小さな血管奇形が見落とされる可能性があります。
可能であれば3D撮像を含め、必要に応じて薄い再構成で見ます。

B. 後頭蓋窩・脳幹・小脳も丁寧に見る

HHTでは病変部位が限定されるわけではないため、大脳だけでなく後頭蓋窩も確認します。

C. MRAだけで陰性としない

小さなAVM、低流量病変、海綿状血管奇形はMRAだけでは見えにくいことがあります。
MRAは血流を見る検査であり、MRI本体のT2*/SWIやFLAIRと組み合わせる必要があります。

D. DSAは必要時に検討

脳血管病変では、カテーテル血管造影、DSAが最も詳細ですが、侵襲があります。
MRI/MRAで疑わしい病変がある場合、治療方針を決める段階で脳血管内治療専門医が判断します。2025年のレビューでも、MRI単独では一部の高流量病変が過小検出される可能性があり、DSAが最も感度の高い検査であることが指摘されています。


脳MRI/MRAレポートで記載してほしい項目

記載項目内容
AVMの有無nidus、流入動脈、流出静脈
AVFの有無硬膜動静脈瘻など
海綿状血管奇形SWI/T2*で評価
微小出血部位・数
陳旧性梗塞特にPAVM由来の奇異性塞栓の可能性
急性梗塞DWI高信号の有無
脳膿瘍既往・疑い所見
治療要否脳外科・血管内治療への紹介要否

4. 肝血管奇形:腹部超音波・ドプラ検査の方法

基本方針

HHT、とくにHHT2、ACVRL1関連では肝血管奇形が多く、
高拍出性心不全、肺高血圧、門脈圧亢進、胆道障害につながることがあります。

肝病変は、単なる「肝腫瘍の有無」や「脂肪肝の有無」を見る通常腹部エコーでは不十分です。
HHT肝血管奇形を意識したカラードプラ・パルスドプラ評価が必要です。

2023年の肝HHT管理レビューでは、ドプラ超音波は肝血管奇形の重症度分類に有用で、肝動脈径、最高血流速度、抵抗指数、肝内過血流、肝静脈・門脈の拡張や流れの異常などを評価項目としています。


肝臓エコー依頼書の書き方

通常の「腹部エコーお願いします」では不十分です。
次のように書くのが重要です。

HHT/オスラー病に伴う肝血管奇形の評価目的。通常の腹部超音波に加え、カラードプラおよびパルスドプラで、固有肝動脈・総肝動脈径、肝動脈血流速度、抵抗指数、肝内血管過形成、肝静脈拡張、門脈拡張・拍動性変化、動脈門脈シャント、動脈肝静脈シャントの有無を評価してください。


肝ドプラ超音波で見る項目

評価項目見る理由
総肝動脈・固有肝動脈径肝血管奇形で拡張する
肝動脈最高血流速度高流量化の評価
肝動脈RI抵抗指数。低下・異常でシャントを示唆
肝内動脈の過形成肝内血管奇形の広がり
カラードプラのモザイク血流高速・乱流の示唆
肝静脈拡張動脈肝静脈シャントを示唆
門脈拡張門脈系への影響
門脈拍動性動脈門脈シャントを示唆
胆管拡張・胆道障害重症肝病変で問題になる
心拡大・心不全所見高拍出性心不全の評価につながる

肝動脈径については、肝動脈拡張が早期の肝病変検出に有用とされ、2023年レビューでは肝動脈径4mm超がHHT肝病変の感度の高い指標と説明されています。別の超音波診断基準では総肝動脈径7mm超や肝内過血流が有用と報告されています。


肝エコーの実施手順案

1. Bモードで全体を見る

まず通常の腹部エコーとして、以下を確認します。

  • 肝腫大
  • 肝実質の不均一
  • 結節性病変
  • 胆管拡張
  • 門脈径
  • 肝静脈径
  • 腹水
  • 脾腫

2. カラードプラを必ず入れる

HHT肝病変では、肝内に異常な高血流が出ることがあります。

確認する所見は、

  • 肝内動脈の目立つ増生
  • モザイク状血流
  • 肝動脈から門脈へのシャント
  • 肝動脈から肝静脈へのシャント
  • 門脈の拍動性
  • 肝静脈の動脈化

です。

3. パルスドプラで数値化する

単に「血流豊富」と書くだけでは不十分です。
可能な限り数値化します。

測定部位記録項目
総肝動脈径、最高血流速度、RI
固有肝動脈径、最高血流速度、RI
門脈本幹径、流速、拍動性
肝静脈拡張、波形異常
脾静脈門脈圧亢進の補助評価

4. 重症度を分類する

HHT肝血管奇形は、軽度・中等度・重度に分類できるように評価します。
Buscariniらの研究では、ドプラ超音波によりHHT肝血管奇形を分類でき、フォローや治療計画に活用できると報告されています。


5. 肝病変では心エコーもセットにする

肝血管奇形は、肝臓だけの問題ではありません。
肝臓内のシャントにより血流量が増えると、心臓に負担がかかり、高拍出性心不全肺高血圧につながります。

そのため、肝病変がある、または疑われる場合は、

  • 心エコー
  • BNP/NT-proBNP
  • 心拍出量
  • 右心負荷
  • 推定肺動脈圧
  • 左房・左室拡大
  • 弁膜症の有無

を確認する必要があります。

肝血管奇形を有するHHT患者では高拍出性心不全が問題となり、心エコーは重症度評価に有用とされています。


6. 実務上の検査セット案

A. HHT疑い例・家族歴例の初回検査セット

検査内容
胸部CT薄切りCT、PAVM評価
頭部MRI/MRAAVM、AVF、微小出血、梗塞評価
腹部エコー+カラードプラ肝血管奇形評価
心エコー肺高血圧、高拍出性心不全、右左シャント補助評価
血液検査Hb、MCV、鉄、フェリチン、TIBC、肝胆道系、BNP
必要時造影CT、造影MRI、CTA、MRA、消化管内視鏡

B. 肺動静脈瘻が疑われる場合

段階検査
スクリーニング経胸壁コントラスト心エコー、SpO2
病変確認薄切り胸部CT
治療計画造影CT/CTA、3D再構成
治療後6〜12か月後CTまたは施設方針でフォロー
長期再開通・新規病変確認

Cure HHTは、肺AVMスクリーニングを小児では3〜5年ごとに行うと説明しており、実務レビューでは陰性後の再検査を小児5年、成人5〜10年程度で行うと整理されています。


C. 脳病変が疑われる場合

段階検査
初回頭部MRI/MRA
必須シーケンスDWI、FLAIR、T2*またはSWI、MRA
疑わしい場合造影MRI/MRA、CTA
治療判断脳血管内治療医・脳外科でDSA検討

D. 肝病変が疑われる場合

段階検査
初回腹部エコー+カラードプラ+パルスドプラ
評価項目肝動脈径、血流速度、RI、門脈、肝静脈、シャント
重症度評価心エコー、BNP、肝胆道系酵素
詳細評価造影CT、造影MRI
フォロー症状・心負荷・血流所見に応じて定期評価

7. 医療機関への依頼文に入れるべき一文

患者会・紹介状・行政資料では、次の一文が重要です。

オスラー病/HHTは、Curaçao基準で確定に至らない疑診例、家族歴を有する未発症例、また遺伝子検査陰性例であっても、肺動静脈瘻、脳血管奇形、肝血管奇形等を合併し得るため、確定診断を待たず、臨床的疑いの段階から全身血管奇形の画像スクリーニングを実施する必要がある。


8. 検査依頼書テンプレート

胸部CT依頼文

オスラー病/HHT疑い、または家族歴あり。肺動静脈瘻のスクリーニングおよび治療適応評価をお願いします。
1mm前後の薄切り胸部CT再構成にて、肺野条件・縦隔条件、MPR、MIPを作成し、肺動静脈瘻の有無、部位、個数、栄養動脈径、流出静脈径、nidus径、単純型・複雑型、多発性、塞栓術対象の有無を評価してください。
既塞栓例では再開通および新規病変の有無も評価してください。

頭部MRI/MRA依頼文

オスラー病/HHT疑い、または家族歴あり。脳動静脈奇形、脳動静脈瘻、海綿状血管奇形、微小出血、脳梗塞、脳膿瘍関連病変の評価をお願いします。
T1、T2、FLAIR、DWI/ADC、T2*またはSWI、3D TOF-MRAを含めて撮像し、必要に応じて造影MRI/MRAまたはCTAをご検討ください。

肝臓エコー依頼文

オスラー病/HHTに伴う肝血管奇形の評価をお願いします。通常の腹部エコーに加え、カラードプラおよびパルスドプラにて、総肝動脈・固有肝動脈径、最高血流速度、抵抗指数、肝内過血流、肝動脈−門脈シャント、肝動脈−肝静脈シャント、門脈拡張・拍動性、肝静脈拡張・波形異常、胆管拡張、肝腫大、脾腫、腹水の有無を評価してください。
肝血管奇形が疑われる場合は、心エコーによる高拍出性心不全・肺高血圧評価も併せてご検討ください。


9. プロセス表現

「確定診断後は全身検査を必須化する」

HHTでは、確定診断後に限らず、疑診例、家族歴例、遺伝子検査陰性でも臨床的に疑わしい例を含め、肺・脳・肝臓を中心とした全身血管奇形スクリーニングを実施する。特に肺動静脈瘻は脳梗塞・脳膿瘍等の予防可能な重篤合併症につながるため、診断確定を待たずに画像検査へ進める。

これが患者会として最も重要な提言になります。

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